| ダビット・オイストラフの思い出 |
| ヘンリク・シェリング |
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敬慕の念をもってオイストラフの思い出を語るとき、私は彼の他に類を見ないほどユニークな芸術の世界、彼の芸術の崇高な完成度、そして彼の示した無比の解釈に対する賞賛の気持ちを強く抱かざるを得ない。常に素直であり、常に飾るところのない人であった。彼の芸術には偉大なマエストロにのみ見られる厳格な科学性と完璧な技術による裏付けがあった。しかし何にもまして、私が最も敬意の念をもっているのは、ダビット・オイストラフは、かくも単刀直入に、しかも説得力ある方法で、心情的に人に語りかけることのできる人であったということである。さらに、男として、友として、同僚としての彼は、まことに素晴しい人格・個性の持ち主であった。彼の高貴さはその素朴さと、助けを必要とする人には助けを、助言を必要とする人に助言を、そしてインスピレーションを必要とする人にはインスピレーションを与える親切心にあった。まことにダビット・オイストラフは、ヴァイオリニストとしてのみならず、また音楽家としてのみならず、一人の優れた人格者として、世界でも稀に見る個性の持ち主であった。私は、彼をピカソ、ストラビンスキー、アルトゥール・ルビンシュタイン、イグナッツヤン・パテレフスキー等と同格の人物と見做すことに何らの躊躇も感じない。
オイストラフはきわめて特別な人であり、彼を知るすべての人々の心に永遠の感動を残した人であった。
加藤潔『偉大なる音楽家 回想のダビッド・オイストラフ』(全音楽譜出版社)4〜5頁より引用しました。
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