投稿者:びんわ
    「わたしとシェリング」

Last Updated: 2003/08/01
Administrator: Binwa


1 序・・・生活必需品としてのシェリング

 わたしが、ヘンリク・シェリングの演奏と出合ったのは大学4年のときです(1997年)。はじめは、バッハの無伴奏ソナタとパルティータのCD(2枚組み)しか持っておらず、週に1〜2度聴く程度だったのですが、それから6年を経て、今ではシェリングの録音を聴かない日は一日もないほど入れ込むようになってしまいました。シェリングの、輝くような勢いのある音色がとても大好きなのです。シェリングの演奏を聴かない生活など、考えることができません。

 シェリングの影響は、生活全般に及んでいます。たとえば、わたしが朝、起きてかける音楽も、夕方、帰宅してかける音楽も、シェリングの演奏なのです。寝る前には必ずシェリングが演奏するバッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第1番アンダンテを聴きます。これを聴かなければ落ち着いて眠ることができません。朝から晩まで、わたしは、時間さえ見つければシェリングの演奏を聴いています。

 嬉しいことがあったときは、必ずシェリングの演奏を聴きます。昨年、W杯で日本がベルギーに勝ったとき、わたしはブラームスのヴァイオリン協奏曲(第三楽章)をかけました。W杯での初勝利という熱狂と調和する音楽は、ドラティ指揮のブラームスのヴァイオリン協奏曲の第三楽章しか考えられなかったのです。冒頭の非常に喜ばしいシェリングの音色こそ、日本チームの勝利の興奮に酔うわたしの心境にぴったりの音楽でした。大学時代の友人の奥さんが赤ちゃんを身ごもったとき、わたしは、お祝いとしてシェリングのCDを贈りました。やがて産まれてくる赤ちゃんが、気高くて、誠実で、純粋な人に育ちますように、という願いを込めて。

 悲しいことがあったときもシェリングのCDを聴きます。仕事や人間関係でミスを犯してストレスがたまったときは、明るい曲をかけて気持ちを取り直します。こういうときは、協奏曲のような大掛かりな編成の曲よりも、ヴァイオリン・ソナタのような室内楽を聴くことが多いです。とりわけ、モーツァルトやベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ、あるいはベートーヴェンのピアノトリオを聴くと気分が明るくなります。ルクレールのヴァイオリン・ソナタ第三番も良いです。

 このように、わたしの日常生活の中ではシェリングの演奏が密着しているので、シェリングの演奏なしの生活を考えることができません。

2 精神安定剤としてのシェリング

 わたしは臆病者なので、仕事でも私生活でも、「本番」に非常に弱いタイプです。「本番」が間近に迫って緊迫する状況のときは、わたしはシェリングのCDを聴いて心を落ち着けるようにしています。こういう状況でよく聴くのがシャコンヌです。「本番」の日の朝にシャコンヌを集中して聞いて、家を出るのです。そうすると、とても落ち着いて行動できるようになり、大きな失敗をしなくてすみます。

 また、わたしはストレスを溜め込みやすい性格をしているのですが、ストレスがたまって爆発しそうなときは絶対にシェリングを聴きます。彼の音楽を聴いているうちに、自分が怒っていることなんかどうでもよいという心境になっていって、ストレスが解消されていくのです。ですから、感情的になってしまったときはシェリングのCDを聴いて落ち着かせるようにしています。

 このように、不安なときや怒っているときにもシェリングは不可欠です。このようなときは、シェリングは精神安定剤のような役割を担ってくれます。

3 ひたすらシェリング

 なんで、シェリングの演奏を聴くと心が落ち着くのか、わたしには説明できません。シェリング以外の演奏家、たとえば、ハイフェッツやミルスタイン、グリュミオーなどのCDも好んで聞きますが、シェリングほど落ち着くということはありません。ハイフェッツやミルスタインの演奏は、総じてテンポが速すぎると思います。聴いていると気持ちがあわただしくなってしまい、落ち着くことができないのだと思います。グリュミオーは音が悲しすぎる。聴いていると感極まってしまうため、やはり落ち着くことができません。諏訪内晶子さんは、テンポが落ち着いていて好きなのですが、音楽に表情がなさすぎるために長時間聴くと飽きてしまいます。庄司紗矢香さんは、とてもすばらしいヴァイオリニストだと思いますが、わたしは彼女の演奏を聴いていると無性にイライラしてしまいます(何でなのかは全く分かりません)。

 ただ、ひとり、シェリングだけが、わたしの心を安らかにさせてくれます。彼の音色がわたしの嗜好に一致するからなんだと思います。自分の好みにぴったり合った音楽を見つけることは、もしかしたら容易なことではないのかも知れませんが、わたしは運がよいことに、シェリングの演奏と出会うことによってそれを見つけることができました。わたしは、ヘンリク・シェリングの音楽に包まれながら毎日を過ごし、それを、ずっと続けていくのだろうと思います。

 一度でいいから、シェリングの実演に接してみたかったです。

 

Top Page